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ガン-ピーターソン検定

 

よみ方

がんぴーたーそんけんてい

英 語

Gunn-Peterson test

説 明

宇宙(銀河間空間)の電離度を推定する方法の一つ。ガン(J. Gunn)とピーターソン(B. Peterson)によって1965年に提案された。中性水素はライマンα(アルファ)線(静止系波長121.6 nm)の波長の光子を選択的に吸収・散乱する。したがって、完全電離していない宇宙にある天体の観測スペクトルのうち自分自身のライマンα線の波長より短波長側は、天体と観測者の間にある中性水素による吸収・散乱を受けて、一様に弱く観測されているはずである。ライマンα線の波長を境にしたスペクトルの高低差から宇宙の電離度を推定するのが、ガン-ピーターソン検定である。

この検定は高い信号対雑音比のスペクトルを必要とするので、明るい天体であるクェーサーが主に用いられる。最近ではガンマ線バーストへも応用されている。この検定により、宇宙は現在から赤方偏移6程度までほぼ完全に電離していることがわかっている。ただし、ライマンα光子は極めて吸収・散乱されやすいので、ごく少量の中性水素があるだけで短波長側のスペクトルは完全にゼロになってしまう。そのためこの検定は、完全電離にごく近い状態の診断に適している。また、現実の銀河間空間はこの検定で想定されているような一様密度ではなく、さまざまな規模のガス雲(クェーサー吸収線系)が存在する。検定の際はこの効果も考慮する必要がある。

2023年04月18日更新

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    *クエーサーのライマンα線より短波長側は、中性水素ガスによる吸収・散乱を受けて、一様に弱く観測される。
    梅村雅之・千葉柾司・西 亮一「銀河形成理論」、シリーズ現代の天文学 第3巻、二間瀬・池内・千葉編『宇宙論II』 5章 図5.10(日本評論社)